金曜の朝はいつも甘い匂いで目が覚める。アパートの近くのパン工場が動き出すからだ。
木曜までは大学に行ってるので分からない。
匂いにつられ、最近私は金曜になると朝からホットケーキを焼く。
1枚目
半煮え
2枚目
黒こげ
うちの母も昔、よくホットケーキを焦がして表面を包丁でガリガリ削っていた。
当時の母は28歳。そりゃ焦がすだろう。47歳になった娘もこうして焦がすのだから。
では、おいしいホットケーキとは。
東京で1200円もするパンケーキを食べたことがあるが、あんなもんではない。
私の目指すホットケーキは、あれである。
「ちびくろサンボのホットケーキ」
同じものを作ろうと思っても無理である。
バターの材料が虎だから。
喧嘩した虎が仲間の尻尾を追いかけて、木の回りをグルグル回って溶けてできた黄金のバター。
子どもの私には、この世で3位に入るおいしいものに見えた(あとの2つは、ハイジのミルクとギャートルズのマンモスの肉)。
ちびくろサンボについては、差別的と一時絶版になったようであるが、いろいろ読んでみると根が深い問題であるようだ。
「ちびくろ」がいかんのかと思っていたが「サンボ」のほうが問題だったらしい。「猿」とか「奴隷」みたいな意味合いであるとか、いやいや実はサンボが「優秀な」、マンボが「たくさんの」、ジャンボが「大世界」という意味であるそう※だとか、黒人をステレオタイプに見ている(肌が黒くて唇が厚い、原色の服を着る)、侮辱している(落ちてるバターを食べる、ホットケーキを169枚も食べる など)だとか。
2005年に17年ぶりに復刊したらしいが「ちびくろさんぼ」と、サンボが平仮名なのはなぜだろう。
ステレオタイプや侮辱とかの問題は別として、言葉は、語源が曖昧であったり言葉自体にはあまり意味がなくても、それをどう考えどう使うかが問題なのではないかと思う。
まじめな話になってしまった。
1週間分の朝食 だいたい焼きすぎ
サンボの母、マンボがつくるホットケーキにはとてもかなわない。あんなおいしそうなホットケーキは一生食べられないと思う。
だから私は、ええ大人になった今でもサンボがうらやましくて仕方がないのである。
※出典
https://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~nadamoto/work/199109.htm