6月から土日だけのアルバイトを始めた。
特別養護老人ホームの看護師である。
コロナのせいでどこも施設は実習を受け入れてくれないので、スタッフとして働いてその活動が実習に匹敵するものであれば単位として認めてくれるかもしれない、ということで。
しかし、教授から「7月から実習先が確保できたのでアルバイトは辞めてください」と6月半ばに指令が。実習先にコロナを持ち込まないため、実習期間中は自粛生活が必須だからだ。
もともと1ヶ月しか働けないかもという話は教授から施設長さんにしていたみたいで、残念ながら昨日が最後のアルバイトとなってしまった。残念すぎるし勝手すぎる。
やっと担当フロア25人の入居者さんの顔と名前と既往歴、飲んでる薬なんかを覚えたのに。
スタッフさんとも仲良くやれてたのに。
久々に働く喜びを感じられたのに。
形から入る私は、介護用のポロシャツと入浴介助用の短パンまで買ったのに。
バイト初日に看護師さんから「サイズが合わないから」と言ってめちゃくちゃ軽くて履きやすいシューズをもらったのに。
仲良くなった介護士さんからは、お別れの日に「入浴介助手伝ってくれてありがとうございました」とお菓子をもらったのに。
いやいや、こっちが差し上げる側でしょ。
みんないい人すぎる。
特養は初めてだったが、とても勉強になった。
まず、ケアが行き届いている。
入居者さんは爪もきれいに切り揃えられ、耳垢なんて皆無。ベッドから車椅子でロビーに出てくるときは、必ず介護士さんがきれいに髪をとかして身なりを整えてくれる。
失禁する方には声をかけてトイレに誘導し、全員、リハビリパンツという名のオムツではなくパンツをはいている。
これ。KOYOのメッシュホルダー 780円
100回洗濯できるらしい。
これのなかに尿取りパットを当てる。
だからなのかオムツかぶれは一人もいなかった。
よく伸びるし柔らかいからトイレの介助もしやすい。
テープ式オムツは1枚約90円。
リハビリパンツは1枚約70円。
尿取りパットは1枚約30円。
看護師はオムツの値段に疎いといわれる。
ご家族に買ってきてもらい、じゃんじゃん使ってしまう。汚れたら交換するのは当たり前なのだが、もう少し節約してもいいのではと思うこともよくあった。
私が訪問診療の看護師をしていたとき、尿で汚れた紙オムツを庭に広げて干しているおばあさんがいた。老老介護の家庭だった。干しても意味がない、と言ってしまえばそれまでだが、そんな爪に火を灯すような生活のなかでオムツ代を捻出しているのだ、ご家族は。
入居者さんにもたくさん学ばせてもらった。
お年寄りに飢えていた(?)私は、時間を見つけては肥厚した入居者さんの足の爪をニッパーで削りながら、結婚したときの話やお見合いで初めて相手と会ったときの話を聞いてまわった。
15でお嫁に行き、かまどでご飯がうまく炊けなくて自分だけ炭のようなお米を食べていたというおばあさんは、「俺に黒いん寄越せ」と言って焦げて真っ黒なおにぎりを食べてくれた亡きご主人の話をしてくれた。ご主人は当時19才。
お姑さんたちにはいつも白い部分をよそっていたから、二人だけの秘密だったとうれしそうに話す顔が忘れられない。
楽しいバイトだったなぁ。
1ヶ月で83,000円ももらえたし。
残念すぎる…